第二章 不動産基礎知識

〇耐用年数について
基本的に不動産は
・木造
・軽量鉄骨造
・重量鉄骨造
・RC(鉄筋コンクリート)造
・SRC(鉄骨鉄筋コンクリート)造
があります。
※実は現在SRCの上の構造が試験的に作られていますがそのことについては触れないでおきます。
それぞれに特徴があるため、一つ一つ書いて行きます。
金融機関から融資を引くさいに融資年数と密接に絡んでくるので覚えておいて損はないと思います。

◇木造
耐用年数が22年。
積算計算時再調達価格14万円。
基本的にこの構造の物件はランニングコストが低いことが特筆すべき点だと思われます。
新築の高利回りを求めるのであればこの構造です。


◇軽量鉄骨増
耐用年数は27年。(※木造と同様の耐用年数で考える金融機関が大半)
積算計算時再調達価格14万円。
この構造は現在、ほとんど作られていないのではないでしょうか?
土地を持っている人が木造よりも丈夫じゃない?
みたいなノリで建てる人しかいないように感じています…。


◇重量鉄骨造
耐用年数は34年。
積算計算時再調達価格17万円。
この構造はよく見かけるんじゃないでしょうか?

概要書にはよく『S造』と書かれているかと思います。
個人的にはオリックスやSBJなどで耐用年数を超えて融資をしてくれる金融機関から融資を引きキャッシュフローを多くとるための物件という印象を受けています。


◇RC(鉄筋コンクリート)造
耐用年数は47年。(※一部金融機関では35年〜40年)
積算計算時再調達価格19万円。
この構造はランニングコストはかかりますが資産性を重視するのであれば最も適した構造かと思います。
ランニングコストはだいたい家賃収入の20%前後で見ておくのがベストかと思います。
◇SRC(鉄骨鉄筋コンクリート)造
耐用年数は47年。(※一部金融機関では35年〜40年)
積算計算時再調達価格19万円。
この構造は日本国内で最も頑丈な構造と現段階で認められているものです。
ただし、この物件の難点は建築費用や解体費用が最もかかる構造です。

資産性を考慮するのであれば、たしかに珍しい構造ではありますが再調達価格も19万円とRC造と変わらないためRCの物件を購入するのでも別に問題ないと思います。
金融機関は基本的に融資年数を【耐用年数ー経過年数】としているため上記の耐用年数は覚えておいて損はないかと思います。
木造に関しては耐用年数が元々、短いため金融機関も考慮した上で35年ー経過年数という融資年数で融資をしてくれるケースもあります。
融資年数の考え方は金融機関によって様々ですが上記の構造によってそれぞれ【耐用年数ー経過年数】で融資をしてもらえるということは念頭に置いておくのがベストだと思います。

〇金融機関の評価基準
前置きなく、いきなり本題に入りますが金融機関の評価基準は大きく分けて【積算価格】【収益価格】に分かれます。
この2つは重要なポイントになるため念頭に置いておいてもらえると嬉しいです。


◇積算
積算価格とは、土地と建物を別々に現在の価値で評価し、それを合わせた評価額のことを言います。
積算価格の算出方法を「原価法」と呼びます。
土地の価値の評価の方法としては路線価や国土交通省の公示価格を利用して価格を算出します。
これに対して建物の場合には再度新築した場合の価格を前提に、その価格に残化率(価値が0になるまでの年数に対する新築から経過した年数の割合)を掛け合わせたものから算出されます。

計算式は
路線価×地積=土地価格
再調達価格×延床面積÷耐用年数×(耐用年数ー経過年数)=建物価格
土地価格+建物価格=積算価格
上記のようになります。
RC造で路線価が10万円、地積が100平米
延床面積200平米、経過年数10年だった場合
10万円×100平米=1000万円(土地価格)
19万円×200平米÷47年×(47年−10年)=29,914,893円(建物価格)
1000万円+29,914,893円=39,914,893円(積算価格)
となります。

一般的には積算価格をもとに融資額を算出する金融機関は上記の計算式で金融機関は評価をしますが金融機関によっては耐用年数が違ったり専有面積しか積算の計算式にはめなかったり建物価格は8割とする金融機関もあります。
各金融機関の癖を抑えておくと買いたい物件が出て来た時に便利だと思います。

◇収益価格
収益価格とは、対象の不動産が将来生み出すだろうと予測する純利益と現在価値を総合した評価額のことを言います。
収益価格の算出方法を「収益還元法」と呼びます。
こちらの収益価格に関しては一般的にも言える計算式が存在しません。
各金融機関が独自の計算をした上で算出されるケースが多いものです。
メガバンクで例えると「りそな銀行」が最も多く使う評価基準です。
りそな銀行は独自のデータベースを持っており家賃相場や家賃の下落率、空室率を算出した上で物件保有後の当該物件でどれだけの利益を購入者が享受するかを算出し融資額を算定しています。

◇積算価格と収益価格どっちを重視すべき?
ここまでで積算価格と収益価格の違いをお分かり頂いたかと思います。
基本的にはどちらも大事なのですがどちらを重視すべきかと聞かれると「金融機関によって違う」という結果になります。
金融機関により積算を好むか、収益価格を好むかは絶対的に違います。
積算価格よりも下の融資額しか出さないという金融機関もあります。
逆に独自で計算した収益価格よりも下の融資額しか出さないという金融機関もあります。
ご自身のご年収や金融資産に見合った金融機関で借り入れを起こすために事前にどちらを重視するかは
金融機関の担当者に確認しておいてもよいと思います。

〇物件購入時諸経費について
一般的に「頭金」と呼ばれるもの以外にも多くあります。
ご自宅を購入された方なんかはご存知かもしれませんが3000万円の物件購入時に500万円だけ頭金を出してほしいと金融機関から言われたことはないでしょうか?
この500万円を払えば買える!と思った方もいらっしゃるのではないかと思います。
実際はこの500万円という頭金以外にも発生する費用が多くあるので、そこを先に見て頂ければと思います。
住宅の購入時には現段階では諸費用がかからない形をとるケースもありますが収益物件の場合、その形をとることが難しくなりつつあるのが現状です。

【諸経費】
◇仲介手数料
こちらは仲介物件に関してのみ発生する費用です。
仲介手数料は価格帯によって変わるものですが一棟収益物件の場合は3%+6万円の税別が基本にはなりますが
一点だけ注意点があります。
建物がすでに消費税が課税されているため評価証明の評価額を按分した建物を税抜き価格で計算しなければいけません。(税法で二重課税をNGとしているため)一般的に知られている計算式は物件価格×3%+6万円の税別ですが。正しい計算式は
(土地価格+建物価格(税抜き))×3%+6万円の税別となります。

例)1億の物件で
土地と建物価格の按分上土地:5000万円、建物5000万円の場合
建物5000万円の税抜き価格は約4545万円となります。
(5000 万円+4545 万円)×3%+6万円の税別で約321万円
上記が正規の仲介手数料となります。
上記は収益不動産をこれから買いたいという人がよく見落とすポイントなので注意して頂きたいポイントです。


◇登記費用
登記費用や司法書士報酬については基本的に一概に言えません。
物件価格や、評価額によって変わります。
計算式等はある程度、決まっていますが業者や司法書士の先生に確認を取るのが一番確実かと思います。

◇火災保険料
火災保険や地震保険は必ず入ってください。
地震大国と呼ばれる日本国内の物件を買うなら個人的には絶対に入ってください!とお願いします。


◇不動産取得税
こちらも絶対的にかかります。
不動産を購入(取得)したことに対する税金です。
だいたい物件購入後4ヶ月から半年後に通知が来るので
忘れるかたも多いですが忘れないように気を付けてください。

ここまで長々と記載を致しましたが諸経費はだいたいの計算ですると物件価格の7%~8%程度で想定しておいてください。

物件価格が1億だった場合は購入時にかかる諸経費は700万円から800万円程度。
それにプラスして金融機関が「売買価格の1割を自己負担してください」と言ってきた場合は1 億の1割。つまり1000万円が必要となり合計負担額は1700万円から1800万円程度かかるイメージです。
上記はあくまで、一般的なものであり以上なほどに安い物件に関しては不動産取得税の比率が上がる為諸経費率が上がる可能性があることをご承知おき下さい。

〇融資について
全額現金で買われる人は極めて少数なのでほとんどの方が融資を引くかと思います。
個人的に収益物件を購入する為に一番重要なポイントだと考えています。
この投稿からご自身がどのあたりの金融機関が使えそうかどうかの判断をして頂ければと思います。

◇現住所と金融機関
これはよく疑問に思われるものです。
たとえば都内に住んでいる人が北海道の地銀を使えるか?
という質問が多いのですがほぼ不可能だと思ってください。
一般的に地銀法、信金法、信組法と呼ばれるものが存在しその内容は「顧客と当該金融機関の関係性を問う」
というものが大きなものです。
かなり少ないですが、とある金融機関では「都内に住んでいても融資できますよ。」という地方の金融機関もあります。

それにはテクニカルな手法を用いる場合が多かったり実家がそのエリアにある且つ実家に住んでいる人が主たる債務者または連帯保証人に入ることを条件とされることが多いです。
なので基本的には自分が住んでいる場所の近くの金融機関を利用するということを念頭においてください。


◇融資年数について
基本的なメガバンク、地銀、信金、信組では融資年数は【耐用年数ー経過年数】とされるケースがほとんどです。
ノンバンクについては独自の耐用年数の考え方をしているところが多く経過年数に関わらず融資年数を30年とする金融機関も存在します。
メガバンクでも物件の条件により融資年数を伸ばす金融機関があったりRCの耐用年数を40年としている金融機関も存在します。

それぞれの金融機関により異なるため使えそうな金融機関がある程度の目星がついてきたら「融資年数ってどう計算するの?」と担当者からヒアリングしておくのがベストかと思います。


◇築年数について
上記のことから築年数が若い物件が融資年数が取りやすいことはお分かり頂けたかと思います。
ただ、築年数が若い物件=高利回りが狙いづらいという事実があります。
そこで高利回りを好んでいる方に一点注意をして頂きたいポイントがあります。
【旧耐震基準】の物件についてです。
旧耐震基準とは建築物の設計において適用される地震に耐えることのできる構造の基準で、1981(昭和56)年5月31日までの建築確認において適用されていた基準をいいます。

これに対して、その翌日以降に適用されている基準を「新耐震基準」といいます。
旧耐震基準の物件に対して融資を出す金融機関は極少数です。
ノンバンクでも融資を出さない金融機関が多い状況です。
理由としては地震大国と呼ばれる日本国内で地震に弱い物件に融資を出していて地震が起きた際にもし物件が滅失してしまえば金融機関としてのリスクが高すぎるためです。
旧耐震=高利回りとなっている原因の一つが「融資がでないから買い手がいない」というのがあります。
このことを考えると旧耐震には手を出さないのが良いかもしれませんが立地や利回り次第では三井住友トラストローン&ファイナンスが融資を出してくれる可能性はあります。

その他にも金融機関によっては路線価×地積の金額だけであれば20 年の事業融資として融資をしてくれる
金融機関は存在しますがこの稟議書を書ける金融機関の担当者もかなり少ないのが事実です。
そこを考えると旧耐震基準の物件には手を出さないのがベストかもしれませんね。

◇フルローンとオーバーローンについて
一時期、某金融機関においてフルローンやオーバーローンが横行しました。
この事実はどうしようもないのですがまずはカラクリを説明します。
金融機関には融資割合というものが存在し「売買価格の〇割は自己負担してください。」
という規定があります。
これがアパートローンと呼ばれる融資商品です。
これを逆手にとり上記の〇割というのを売買価格に乗せて金融機関に見せるという手法です。
(ハッキリ言いますが違法です)

分かりやすいように例をあげると実際の売買価格が10000万円の物件の場合12500 万円で金融機関には概要書等を提出します。
そうすると自己負担割合が2割の場合12500 万円の2割、つまり2500万円を支払うと金融機関は思い込みます。
実際にはリアルな売買価格が10000万円のためこれでフルローンが完成するというカラクリです。
オーバーローンは上記にさらにプラスした金額を金融機関に見せるというやり方です。
これを聞いて、それでもフルローンやオーバーローンがやりたいという人は少ないと思います…。

このカラクリの説明がなく「フルローンやオーバーローンがとれて当たり前」
考えている人が現在では多いのが事実です。
普通に考えると5000万円以上の自己資金を蓄えている方はほとんどいないため、これをやらざるを得ない人も多くいるのは事実ですが上記をやらずにフルローンやオーバーローンで物件を購入したいのであれば金融機関との付き合いを濃くすることでフルローンやオーバーローンを得られることもあるのでご自身で金融機関を開拓し業者での融資付けがされた案件だけを購入するというスタンスは控えるべきだと個人的には考えています。

投稿者プロフィール

GURADU管理人@浪田
GURADU管理人@浪田
全国の大家さんと繋がる「場」を作っています。 自身の経験から得た不動産投資の成功・失敗談や、最新の市況ニュースを更新中。 孤独になりがちな大家業ですが、ここでは仲間と共に学び、共に豊かになることを目指しています。