
不動産売買における「二重売契(にじゅうばいけい)」とは、「実際の取引価格とは別に、銀行の融資(住宅ローン等)を多く引き出すために金額を水増しした、偽の契約書を作成する行為」を指します。業界用語では「ふかし」とも呼ばれます。
一見、手出し資金(頭金)がなくても家が買える「裏技」のように聞こえますが、その実態は犯罪行為であり、発覚した際のリスクが極めて高い「闇」の部分です。
具体的にどのような落とし穴があるのか、整理して解説します。
1. 二重売契の仕組み
通常、以下の2種類の契約書が作成されます。
- 「本契約(実契約)」: 売主と買主が合意した本当の価格(例:3,000万円)
- 「ふかし契約(ダミー)」: 銀行に提出する、金額を高く設定した契約書(例:3,500万円)
目的: 銀行から「物件価格の100%以上の融資(オーバーローン)」を引き出し、本来自己負担すべき諸費用や家具代、あるいは手元資金として現金を残そうとするものです。
2. 「闇」に潜む4つの大きな落とし穴
① 金融機関に対する「詐欺罪」
銀行は「適正な物件価値」に対して融資を行います。嘘の契約書で融資額を騙し取る行為は、詐欺罪や私文書偽造罪に該当する可能性があります。
リスク: 発覚した場合、銀行からローンの即時一括返済を求められます。払えなければ物件は競売にかけられ、自己破産に追い込まれるケースも少なくありません。
② 税務署による「脱税」の疑い
契約書の金額が2つあると、不動産取得税や印紙税、将来売却する際の譲渡所得税の計算が狂います。
リスク: 税務調査で発覚すると、重加算税などの厳しいペナルティが課されます。
③ 不動産業者との「共犯関係」
二重売契を持ちかける業者は、「みんなやってますよ」「バレませんから」と甘い言葉をかけますが、これは業者が「何としても成約させて仲介手数料を取りたい」という身勝手な動機によるものです。
リスク: 後日トラブルになった際、業者は「買主の希望だった」と責任を転嫁することがあります。また、そんな違法行為を平気で行う業者は、物件の不具合(瑕疵)を隠している可能性も高いです。
④ 銀行の検知能力の向上(2025年現在の現状)
現在、金融機関はAIによる価格査定システムや、周辺の取引相場データを精緻に保有しています。
落とし穴: 「相場より明らかに高い融資希望」はすぐにアラートが出ます。また、登記簿に記載される金額や税金の申告ルートから、後日バレるケースが増えています。
3. もう一つの二重売買「二重譲渡」との違い
言葉が似ていますが、「二重譲渡」という別の闇も存在します。
- 二重売契: 1つの取引に対して「価格の違う2つの契約書」を作る(ローン詐欺)
- 二重譲渡: 1つの物件を「AさんにもBさんにも売る」という詐欺
どちらも法的にアウトですが、「二重売契」は買主自身が「知らなかった」では済まされない加害者(詐欺の片棒を担ぐ側)になってしまう点が最大の落とし穴です。
まとめ:甘い誘いに乗らないために
もし不動産業者から「手出しゼロで買えるように、契約書の金額を調整しましょう」と提案されたら、その業者との取引は即座に中止することをお勧めします。
チェックポイント:
- 契約書の金額が、実際に支払う金額と一致しているか?
- 「諸費用ローン」などの正当な仕組みを利用しているか?
もし、現在検討中の物件や契約内容で「これって二重売契かも?」と不安な点があれば、具体的な状況(業者からの提案内容など)を教えていただければ、より詳しいアドバイスが可能ですので当社へお問い合わせください。
投稿者プロフィール

- 全国の大家さんと繋がる「場」を作っています。 自身の経験から得た不動産投資の成功・失敗談や、最新の市況ニュースを更新中。 孤独になりがちな大家業ですが、ここでは仲間と共に学び、共に豊かになることを目指しています。
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